1999年 紀伊國屋書店
西村 三郎(1930-2001)
生物地理学、生物海洋学、博物学者。京都大学名誉教授。
1953年京都大学理学部卒業後、水産庁日本海区水産研究所に11年間勤務。京都大学理学部附属瀬戸臨海実験所勤務ののち、1977年、京大教養部助教授となる。
動物の進化論にも関心が深く、独自の多細胞動物『穴蔵起源』説を提唱した。これは、カンブリア紀爆発以前にその祖先が発見されないのを説明するもので、多細胞動物の初期の進化は海底の底質中の間隙性動物の姿で進行したという。化石が出ないのはそれがあまりに小さかったからという説である。フィールドワークと文献調査の双方を行い、人文系においても博識で鳴らし、文系と理系の壁を超えた碩学であった。
近世の同時期に、西欧と日本のともに博物学の大流行に沸いた。ユーラシア大陸の東西の端で、類似した社会現象が巻き起こったという文明の歴史の謎に惹かれ書き下ろされた本作。各地域での博物学の成り立ちや大衆に広がるまでの流れ、また当時の博物学から近代生物学に至るまでの歴史を読み解き、その在り方を比較・考察した内容になっています。構想10年にも及ぶ著者の大傑作です。