「人生と運命 全3冊揃い」を入荷いたしました。

2013年 みすず書房

ワシーリー・グロスマン (1905-1964)

ウクライナ・ベルディーチェフのユダヤ人家庭に生まれる。モスクワ大学で化学を専攻。炭鉱で化学技師として働いたのち、小説を発表。独ソ戦中は従軍記者として前線から兵士に肉薄した記事を書いて全土に名を馳せる。1943年生まれ故郷の町で起きた独軍占領下のユダヤ人大虐殺により母を失う。1944年トレブリンカ絶滅収容所を取材、ホロコーストの実態を世界で最初に報道する。邦訳のある著書に、本書『人生と運命』のほか『万物は流転する』『トレブリンカの地獄――ワシーリー・グロスマン前期作品集』『システィーナの聖母――ワシーリー・グロスマン後期作品集』など。

第二次世界大戦で最大の激闘、スターリングラード攻防戦を舞台に、物理学者一家をめぐって展開する叙事詩的歴史小説である本作。

その刊行までの歴史も複雑で、1950年代後半から執筆され、1960年に完成し刊行を目指していましたが、KGBの家宅捜索を受けて原稿は没収。「今後2-300年発表は不可」と宣告。「外国でもよいから出版してほしい」と遺言し著者であるグロスマンは死去。1980年に友人が秘匿していた原稿の写しがマイクロフィルムに収められて国外に持ち出され、時を経てスイスで出版されたという、出版にいたるまでの背景にも戦争に翻弄された時代が見て取れます。

戦争・収容所・密告。スターリン体制下、恐怖が社会生活を支配するとき、人間の自由や優しさや善良さとは何なのか。権力のメカニズムとそれに抗う人間のさまざまな運命を描き、ソ連時代に「最も危険」とされた本書は、後代への命がけの伝言であると言われています。兵士・科学者・農民・捕虜・聖職者・革命家などの架空人物、ヒトラー、スターリン、アイヒマン、独軍・赤軍の将校などの実在人物が混ざりあい、ひとつの時代が圧倒的迫力で文学世界に再現された本作。20世紀ロシア文学の最高峰の1冊です。

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